GPに選定された京都精華大学

『京都精華大学教育後援会ニュース』No.27, 2003年3月

昨年度から「特色ある大学教育支援プログラム」がはじまっています。社会そのものの大きな変容とともに大学教育の改革が求められ、10年さき、20年さきに活力をもって日本の大学が存在し続ける方向性を見出さなければならない状況のなかで、文部科学省が実施している事業です。全国の大学のなかから、模範となるような教育取組(優れた実践という意味でグッド・プラクティス、略してGP)を行っている大学を厳選するものですが、今年度、京都精華大学の取組が認められ、選ばれました。

今回選定された取組は、環境社会学科での教育方法の工夫であり環境経営コースの実践です。その基盤となっているのが、全学で組織し運営している国際規格ISOの環境マネージメント・システムです。このシステムを立あげていく局面では、教育後援会からの援助金をいただいております。今回の報告とともに、あらためて感謝する次第です。ほんとうにありがとうございました。

その全学の教職員・学生が任務を分担している環境マネージメント・システムには毎年度の内部監査が必要ですが、環境経営コースの学生が内部監査員となってその任務を果たします。学生が内部監査員となる大学は、おそらく他に例がないのではないかと思いますが、この実践的体験が喚起する問題意識と、さらにものごとを追究しようとする学習意欲の深化が第一の段階です。座学による理論学習も現実味が増してきます。

「環境マネジメント実務演習」という科目で、学生が学外の組織・団体に足をはこび、環境マネージメント・システム構築の支援をするというのが第二段階です(この約半年間、学生は他の科目を履修しません)。支援といいますが、通常であればプロのコンサルタントがする仕事です。システム構築の仕方をお教えするのだといったほうが、よくわかるでしょう。このような仕事をするのならば、ほんとうに責任を負って自ら学ぶ人間にならなければなりません。今回のGP選定の一番のポイントは、このことにあったと思います。

もちろん、これは実際的な社会貢献でもあり、二〇〇二年度には城陽市役所、二〇〇三年度には京都府立の八幡高校、木津高校、北稜高校、向陽高校などで環境マネージメント・システムの構築を支援しました。今年度もさらに学生の派遣先を増やし、充実させていく計画です。

京都精華大学は自立した人間の形成をその使命としており、当時としては例のなかった芸術学部の学外実習(インターンシップ)をはじめ、さまざまな先進的取組をしてきたと自負することができますが、今回のGP選定で、大学教育改革のさらに思い切った方向性を確信することができました。社会的な責任意識の発生がなければ自立的な学習は始まりにくく、そしてまた、こまぎれの時間割を超えて没頭することがなければ自立的な学習は起こりえません。この確信を大学全体の気風に、また教育課程全体のなかに押し広げていきたいと考えています。