ひゃー、この輸送船、パセフィック・ティール号とパセフィック・ビンテール号には機関砲がついてるんだって。かっこいーい! イギリスの原子力警備隊が乗り組んでるんだって!
それにしても、イギリスをでてから、フランスのシェルブールによって、アフリカの南を通って、ご苦労さんにもオーストラリアの南をまわって、それから日本にまで北上するから、モックスが日本につくまで二か箇月もかかる。マラッカ海峡とか、海賊やどこかのテロ・グループが襲ってきそうな、やばいところは通らない。
なんだ、がっかり。
いや、いや、どこかの国の潜水艦の艦隊がひそかに護衛してるにちがいないんだ。それが、海中戦をやりにくいところでは、具合がわるいんだよ。
えっ、それじゃ、やっぱり原子力潜水艦が魚雷とか使って、戦うってわけか。すんげー。
そういうことにならないように、護衛するんだ、ばーか。
?××?××?
それにだ、万が一、モックスを核ジャックされても、ちゃんと保険に入っているから、輸送会社も、日本の原子力発電も、だれも損をしない。
ますます、わかんねーな。
おれも、じつはよくわからないんだ。なんで、日本政府はこんなにプルトニウムを原発で使いたいのかね。
えっ、モックスってのは、モックスだろ。プルトニウムじゃないぜ。
それがねえ、やっぱりプルトニウムなんだよ。日本の原発で使用済みの核燃料をイギリスやフランスへ運んで、そのなかにでいきているプルトニウムを取りだして、また原発で使おうということだ。
それって、リサイクルじゃん。資源の節約だ。
ぼけなす! 紙やらペットボトルのリサイクルとはわけがちがう。わかりやすくいえば、たとえばダイオキシンを使って、その残りかすからまたダイオキシンをつくるようなリサイクルだ。いや、ダイオキシンよりタチが悪いというべきだ。
あっ、わかった。リサイクルすれば、ダイオキシン爆弾ができるぐらい、ダイオキシンをつくれる。
いや、冗談じゃないんだ。ダイオキシンも、ベトナム戦争のときには、「エイジェント・オレンジ」っていってな、空からオレンジ色のそれをジャングルの上に大量に撒いたんだ....とんでもないことを思いださせるなよ。なんの話しだか、わからなくなるじゃないか。プルトニウムというのは、たった20キロぐらいだったかで、長崎を壊滅させた原爆の原料だ。それをリサイクルで、どんどん製造しようというのが、核燃料リサイクルというやつだ。
するってーと、プルトニウムってのをリサイクルして、核爆弾を山ほどつくれるってわけか。
まあ、そういうことだ。もう日本は、これまでの原発の稼動で、15トンを超えるプルトニウムをつくりだしている。それをイギリスやフランスのリサイクル工場で分離してもらっている。今度のモックスってのは、それをウランと混ぜたタイプの核燃料だ。
じゃあ、日本も核爆弾をつくれちゃうじゃん。すんげー。
どうも、そういうことじゃないかと、おれは思うんだ。そうでなければ、あんなやっかいなタイプの核燃料を原発でわざわざ使う理由がわからない。
思わせぶりな言いかたじゃん。いったい、おっさん何考えてんの? やっかいって、何が? わざわざって、何が?
ほら、ついこのまえ敦賀2号機で起きたような事故が、今度モックスをいれる高浜の原発で起こったらどうなるか。あの敦賀の事故だって、配管の溶接部分のことばかり報道されてるけど、原子炉の中心部がどうなっているか、ぜんぜんわからない。
そういや、おれも何にも聞いてないな。
おまえが知らないのは不思議じゃないが、ブン屋さんたちは、いったい何を追求してるのかなあ、原発側の発表ばかり書いて。いや、なんともなければ、それにこしたことはないんだが、問題はモックスを使っていたら、どうなったかということは、だれにも分かってない。とにかく、おそろしく危険度は高くなるのは確かだ。
さっぱり、なんのことだか、わからねえ。
なにしろ、原発のこれまでの燃料に混ぜてモックスを使ったのは、ドイツなどで、多くても、核燃料全体の4パーセントまでだった。それを、わが日本では、30パーセントにしようというんだから、なにが起こるか分からないというのが正直なところだ。
初体験ってわけだ。なんだか、こわそー。
それもあるが、問題はそれだけじゃない。おれがいいたいのは、政府が、モックスに使うプルトニウムは核兵器にするにはむいてないと、みえみえの嘘をつきつづけていることだ。やっぱり、ひそかに、核武装の可能性を追求しているからじゃないか、ということなんだ。
いや、おっさん、それはないよ。おもしろいかもしんねーと思ったけど、そんなことしたら、やっぱ、やばいっすよ。
だから、おまえは、おぼこいんだよ。毎年のように日本政府は閣議で、核兵器保有は憲法に抵触しないという確認を、わざわざしてるんだぜ。まだ、「保有する」といっていないだけなんだよ。