授業の目的及び概要(達成目標)
環境問題についてのジャーナリズムがどのように存在してきたか、存在しているかを検討し、ジャーナリズムとは何かについて社会理論的な位置づけを試みたい。一方でジャーナリズムとは客観的事実の伝達であり小説などのフィクションとは相いれないというとらえ方、また他方でジャーナリズムは科学でも学問でもなく一般向けの言論活動だというとらえ方がある。これらのとらえ方自体を批判的に検討することが、第一の目的となるだろう。
授業計画
この前期の環境ジャーナリズムIでは、環境問題を人間社会の問題としてとらえる立場から、過去から現在までの文芸作品、評論、報道などの、いくつかの典型例について、それぞれの背景をとらえ、また個々の作家、批評家あるいはジャーナリストの社会的・政治的立場がいかなるものであったかを論じたい。
- 足尾鉱毒事件 1──荒畑寒村『谷中村滅亡史』から
- 足尾鉱毒事件 2──立松和平『毒——風聞・田中正造』まで
- ジャーナリストとは誰か──イプセン『民衆の敵』をめぐって
- ジョン・ハーシー『ヒロシマ』──原爆をめぐるジャーナリズム 1
- 重松静馬『重松日記』と井伏鱒二『黒い雨』—— 原爆をめぐるジャーナリズム 2
- 長崎の証言の会──原爆をめぐるジャーナリズム 3
- ジャーナリズムとは何か 1──科学と事実
- ジャーナリズムとは何か 2──事実と虚構
- ジャーナリズムとは何か 3──主張と宣伝
- 石牟礼道子『苦海浄土』を読む 1
- 石牟礼道子『苦海浄土』を読む 2
- 宇井純『公害原論』を読む 1
- 宇井純『公害原論』を読む 2
評価方法・評価基準
出席および期間中に提出することになるレポート(2回)で評価する。出席は毎回提出する質問票によってチェックし、欠席が三分の一以上の場合はレポートの提出如何にかかわらずFとする。レポートは、講義内容の把握、批判力、論理性、適切な論拠の提示、主張の明確性などの側面によって評価する。
履修条件・留意点及び受講生に対する要望
事前に配布する多くの資料を読むという授業時間外の作業に手抜きをしないこと。わからないことがあれば調べるなど、事前の準備をして出席していただきたい。また、必ずこの科目専用のノートを一冊用意していただきたい。
テキスト
いわゆる「教科書」はないが、事前に配布する資料は充分時間をかけて読みこなすべきテキストであり、各自大事に保管しなければならない。