第1回・資料 エンペドクレス

ギリシアの哲学者、政治家、詩人、宗教家、イタリア学派医学の創始者。シチリアのアクラガスの市民であった。著名な家系の民主的伝統を受継いで、アクラガスにおける僭主政治ののあとに続いた寡頭政権の打倒に助力したが、王になるようにとの市民たちの招請を断り、後年、この町を去ったようである。前430年、ペロポネソスで没した。

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エンペドクレスの自然学説は、一元論自然学に対してパルメニデスが提出した批判を免れうるような、自然界の理論的説明を与えようとする試みであった。エンペドクレスにはすぐ利用できる別の説明法があったそれはヒポクラテス文書によってわれわれに知られているような、身体とその栄養物を構成する実体を無数に認める医学説のうちに見出される。彼はこの学説と一元論との中間の道を選び、火・空気・水・土の四元(四つの根)を想定して、この四元から、それらが種々の割合で結合されることによって、世界内のすべての事物がつくられると考えた(たとえば、骨の組成は土2・水2・火4である

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なにものも真に生成したり消滅したりすることはなく、ものが変化しているように見えるのは「根」の混合の仕方がいろいろ変わることによる。四つの「根」のを結合させ分離させるのは、「愛」philaと「争い」neikosという二つの作用力である・・・

『ブリタニカ国際百科事典』
「エンペドクレス」の項(Arthur Leslie Peck、藤沢令夫訳)より抜粋

授業日: 2002年4月18日;